DISCOGRAPHY

Self works
Album

新世紀スタンダード
 

新世紀エヴァンゲリオン シリーズのサウンドトラックに、当初から参加しているクリヤが、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の公開を機に手がけた、13年ぶりのアニソン・カバーアルバム。
1998年に「ANTITHESES」シリーズをリリースした時は、本格的なジャズ・アーティストがアニメーション・カバーを行う事は極めてチャレンジだった。しかし時代は変わり、ジャズを題材としたアニメ作品まで登場するに至り、アニソン・カバーはニッチながらも一定の地位を築くに至っている。近年海外公演の多いクリヤは、世界中でジャパニメーションの影響力を体感し、これがある側面で日本のスタンダード・ナンバーとしてのプレゼンスを持っていると実感。13年を経て再度、カバー作品を世に送り出した。
13年後の作品では、日本語によるボーカルカバーも含め、アニメファンにはたまらない諸作品をジャジーにアレンジ。サブカルチャーを恥じることなく、ジャケットも印象的な企画モノとして格段に力の抜けた心地よい作品を生み出した。

tracklist
01. 魂のルフラン (「新世紀エヴァンゲリオン」より)
02. いつも何度でも (「千と千尋の神隠し」より)
03. 創聖のアクエリオン
04. ブルーウォーター (「ふしぎの海のナディア」より)
05. 次回予告 (「新世紀エヴァンゲリオン」より)
06. For フルーツバスケット
07. 空色デイズ (「天元突破グレンラガン」より)
08. ライオン (「マクロスフロンティア」より)
09. 風の谷のナウシカ
10. 2EM20_KK_A09_KURIYA (「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」より)
11. God knows... (「涼宮ハルヒの憂鬱」より)

musicians
クリヤ・マコト (p/key/arr)、納浩一(b)、コモブチキイチロウ(b)、天倉正敬(ds)、村上広樹(ds)、紗理(vo)、KOTETSU(cho)、Chako(cho)

この原稿を書いているいま、ぼくはヨーロッパツアーのまっただ中だ。 ヨーロッパのどの都市へ行っても、日本のアニメーションは本当に大人気。 今回の旅でもつくづく、世界中の人々に日本文化への関心を持ってもらう ために、アニメの果たす役割が大きいことを実感している。もちろんこれは、 ヨーロッパだけの現象じゃない。

2010年にエジプトのカイロ・ジャズフェス ティバルに出演した翌日、ナイル河のクルーズに参加した時のことだ。 船で歌っていた歌手が、劇場版「新世紀エヴァンゲリオン」で使用された 「Fly me to the moon」のカラオケを使っていたので度肝を抜かれた。 まさかエジプトの船の上で自分の演奏を聴くとは、夢にも思っていなかっ た!またパリの地下鉄では、日本のアニメが大好きだという南米チリの 少年に出くわした。彼はその直後に日本へ行くプランを立てており、日本語 を猛勉強したそうでカタコトの日本語で話してくれた。あんまり嬉しかった ので思わず「エヴァ」でピアノを弾いている事を話すと大感激してくれた。 さらに今年はインドネシアのジャカルタへも行ったのだけど、年に一度行わ れる「JKT-JAPAN MATSURI」というイベントに、アニメの大好きな若者たち が10万人も集まっていた。地元のビッグバンドに客演したぼくが、司会者に 促されて「Thanatos(劇場版「新世紀エヴァンゲリオン」のテーマ曲)」の さわりを弾いたら、大きな歓声がわき起こって驚いた。

ぼくが最初のアニメ・カバーアルバム「ANTITHESIS」をリリースしたのは、 新世紀エヴァンゲリオンがブレイクした直後だった。当時のアニメ人気は 一過性のものじゃなく、そういったサブカルチャーこそが日本文化の主流 になって、影響力を持つ時代が来るという予感があった。そして、みんなが 親しんでいるアニメ・テーマ曲のようなものが、これからの新しいスタンダ ードナンバーになっていくんじゃないかと思って録音した作品だ。今にして 思えば、あの作品は今日数多く見られるアニメ関連カバー・アル バムの先駆けとなった作品の一つじゃないかと思う。

あれから早いもので14年!そして今も、日本のアニメは世界中で愛され、 アニソンはグローバルなスタンダードナンバーという一面を持つようになっ た。なにしろジャカルタの若者が、意味もわからない日本語でアニソンを 大合唱するんだからね。これにはぼく自身も驚くばかりだけれど、2012年、 テレビ版からサントラに参加し続けてきた「新世紀エヴァンゲリオン」の、 劇場版新作が公開されるこの年の年末に、新たなカバーアルバムをリリー スできることになったのをとても嬉しく思う。

1998年当時はまだ、アニメの カバーアルバムを作るというのは冒険だった。それがすっかり一般的に なったいま、当時のような気負いは全くなく、リラックスして心地よい作品 ができたように思う。この内の3曲は、アキバ系ジャズシンガー(?)の 紗理をフィーチャー。そして原曲の解説は、選曲の相談にものってもらった ライターの岩片烈氏にお願いした。オリジナルとはちょっと違う、ジャジー なバージョンのアニソンをお楽しみください。

(クリヤ・マコト)

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