DISCOGRAPHY

Self works
Album

X-BASED MUSIC
 

ブレッカー・ブラザーズやチック・コリア・グループで活躍するジェームズ・ジナス、西海岸スタジオシーンで引っ張りだこのマーヴィン・スミッティ・スミス、M-BASE旗手の一人でもあるゲイリー・トーマス、INCOGNITOにも参加していたアレックス・ノリスと、ワールドワイドな実力派アーティストを迎え、意欲的な内容に挑んだニューヨーク録音の佳作。
前作「X-BAR TRIO」以来、R&Bのリズムをアコースティック・ジャズに取り入れていたクリヤだが、本作ではさらにプログレッシブにそれを押し進めた。

tracklist
1. サウザンド・デイズ・イン・モーション
2. ウォッチ・アウト
3. シェイク・アップ・ジ・オリエント
4. ボディ・アンド・ソウル
5. トーキョー・ベイ・リヴィング・ストラグル
6. マダム・ブロンド
7. ピース

musicians
クリヤ・マコト(pf) ジェームズ・ジナス(b) マーヴィン・スミッティ・スミス(ds) ゲイリー・トーマス(sax) アレックス・ノリス(tp)

ジャズライフ 11月号
曲作りのおもしろさは目を見張るものがある。スミティ・スミスが叩いているせいか、M-BASEっぽく聞こえてしまうこともあるが、ストレート・アヘッドなジャズあり、ファンク(ただのファンクではない)あり、甘いバラッドありと、充分楽しめる内容だ。(4)のピアノ・ソロは絶品。サックスのように聞こえる大胆なメロディには驚く。バッキングも美しいし文句ない演奏だ。お馴染みゲイリー・トーマスも快調だし、25歳だというトランペットのアレックス・ノリスも良い味を出している。好みで言えばもっとストレートでない方向にいったらもっとおもしろくなりそうな気がする。わりとカッチリしているという印象がある。(港大原)

レコパル 11月号
X-BARという言語学の理論を音楽にも導入し、独自の音楽世界を築いているクリヤ・マコト(p)の最新作。デビュー作にも参加していたゲイリー・トーマス(ts)、アレックス・ノリス(tp)が再び名を連ね、ジャズの伝統と新感覚に富んだ独特の世界が展開されていく。クリヤの素晴らしいところは、(1)や(6)に示される壮大な作風にある。加えて自己のアイデンティティーを絶妙なタッチで注入した(3)(5)などにも新境地が認められる。複雑な仕掛けや構成があり、演奏面ではかなり難しいことをメンバーに要求しているようだ。しかしできあがったサウンドに難解さは目立たない。頭でっかちにならず、魅力的な音楽にしているところも彼の自慢すべき才能だろう。(小川)

スイングジャーナル 11月号
現在の若手日本人ピアニストの中で、大西順子と並び最もクリエイティブなのがクリヤ・マコトだ。デビュー以来毎回クオリティの高いアルバムを発表し続けてきたクリヤだが、本作は間違いなくこれまでの最高の作品である。「ボルチモア・シンジゲート」以来のおなじみのメンバーがサイドを固めているが、ただ一人初共演なのがドラムのマービン・スミッティ・スミス。このスミスが強力にスゴイ。8分の6拍子のアフロっぽいリズムの(1)ではブインブインとスイングするし、(5)(6)のようなファスト・テンポの4ビートでのスピード感もいい。しかし、何といっても彼の真骨頂を示すのは、16ビートの(2)と(3)だ。聴き手を前へとプッシュするせっつくようなタイム感覚と、16のビート でもジャズを感じさせる生々しさ。これらの曲でジナスにアコースティック・ベースを弾かせたのも大正解。ともすれば前に飛び出すスミスのビートをグッと手元に引き寄せ、ものすごくヘビーなノリを作りだしている。かんじんのクリヤのピアノだが、この人を聴いていつも思うのは、いわゆる"ジャズの文法"にスポイルされていない新鮮さを有しているということだ。特に速いテンポの曲での、ヒラリと飛翔するような疾走感がいい。理知的でありながら熱く、叙情的でありながらセンチメンタルでない。ゲイリーのブリプリ・サックスとあいまって、知的バイオレンスを堪能させてくれる快作だ。(藤本史昭)

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