DISCOGRAPHY

Self works
Album

Paris To The Moon
 

本作は2005年末、初のヨーロッパツアーを大成功のうちに終了したクリヤ・マコトが、その興奮も止まぬパリで録音した初のソロピアノ・アルバムである。
レコーディング・スタジオ「MEGA」は、リュック・ベッソン、スティング、セリーヌ・ディオン、マライヤ・キャリーなど、世界中のVIPが愛用している大陸随一のスタジオだという。また、ヤマハ・フランスの全面協力を得て、ヨーロッパでも屈指という名調律師、大里和人の立ち会いによって録音された。かのリヒテルも信頼を寄せる名手である。
素材と心象にこだわり、最高の時と場所を選んで、ここに、忘れ得ぬ地-パリの情景を映し出す、珠玉の名作が誕生した。

tracklist
1.Paris to the moon (クリヤ・マコト)
2.Stella by starlight (Ned Wasington)
3. Pensativa (Clare Fischer)
4. Passage (クリヤ・マコト)
5. 鐘がなります (山田耕筰)
6. There will never be another you (Gordon & Warren)
7. Peaceful (クリヤ・マコト)
8. Sight of the heart (クリヤ・マコト)
9. Autumn leaves (Joseph Kosma)
10. ペチカ (山田耕筰)
11. Close to you (Burt Bacharach)

musicians
クリヤ・マコト(pf)

STEREO 6月号 特選盤
ヨーロッパ的情緒にしっぽり浸っているのではなくて、どこか和風の香りがある。一人の日本人がパリの街角に立っている様が見えてきます。自作、スタンダードの選曲、共にセンス抜群です。特に「鐘がなります」や「ペチカ」の山田耕筰ナンバー。異国の陰影が加わっているから余計に泣けます。ピアノソロ・アルバムはフュージョンと同じで、限られたプレイヤーしか僕は聴きませんが、これは例外的に今後よく取り出すことになると思っています。(田中伊佐資)

ジャズライフ 6月号
この作品は彼にとって、初めてのソロピアノ・アルバムだ。彼のオリジナルやスタンダードに加え、クレア・フィッシャー、バート・バカラック、そして山田耕筰という選曲も、ジャンルやスタイルにこだわらない彼の音楽性を表現しているようで、興味深い。そしてここで聴かれるピアノは、ピュアで、そして無防備だ。ピアニストしての裸の姿を、何の衒いもなく見せている。時に優しく、時に饒舌。時に繊細で、時に大胆。時にロマンティックで、時にエモーショナル。そんなピアノが、ただただシンプルに表現されている。彼が素晴らしいピアニストだということは、みなさん既にご存知だと思うが、彼の"素"のピアノが、こんなに人間くさいというのはちょっとした驚きだ。山田耕筰のシンプルなメロディーを、こんなに感情ゆたかに表現できるピアニストは、おそらく世界的に見ても希有だろう。ピアニストとしてのクリヤ・マコトの"素直なすごさ"が、1音1音に凝縮された、密度の濃いソロ・アルバムだ。(熊谷美広)

スイングジャーナル 6月号
クリヤ・マコトの新作がソロ・ピアノときいて、一瞬違和感を覚えた。と言うのは、ぼくはこの人は、ピアノという"楽器"に密接に繋がった表現よりも、もっと純粋に"音楽そのもの"で聴き手にコミュニケイトするタイプの音楽家だと考えているからだ。もちろん彼のピアニズムは-その音色含めても-素晴らしい。だがクリヤにとってそのピアニズムはあくまでも"手段"であり、"目的"ではないはず。そういう人が、楽器演奏それ自体が注視されがちなソロというフォーマットを選んだのはどういうわけか?しかし、実際の音を聴いて、その違和感はすぐに解消された。ここでクリヤが自身の獲得したピアニズムを遺憾なく発揮しているのは事実だけれど、しかしそれは「こんなすごいことができます」といった技術の披瀝ではまったくなく、やっぱり音楽そのものでもって、自身の感情を聴き手に伝えることに力点が置かれているのだから。演奏はどれも、極めて即興的。あるいは事前に緻密なリハーモナイズがほどこされているものもあるのかもしれないが、しかしそこに、「前もって準備しました感」がほとんど見て取れないあたりが、この人のイメージの豊かさ、自然さの証左だろう。(藤本史昭)

ぼくは生まれてから10年間関西で育ち、その後の10年を関東で育ち、そしてその後の ほぼ10年をアメリカで育った。それからまた10年東京で仕事をし、仕事に追われ、日々 スタジオを、ライブ会場を飛び回る。このまま一生終えるのかと思っていた(笑)。 ところがそれから10年たったら、再び道は外へ向かい始めた。初めてのヨーロッパ、 初めてのオーストラリア。人生とはまったく不思議なものだ。
おそらく、少なくともこの10年は世界の大陸と島々を渡り歩くような気がする。それで さらに10年後は、一体どうなるんだろう?わかっているのは少なくとも、その時も傍らに、 影のように、ビッタリと音楽を伴っているだろうということ。 何はともあれ、パリへの熱いラブレターを聴いてください。

1. Paris To The Moon:クリヤ・マコト
2004年、2005年と2年連続で、パリへ演奏に行った。最初の年は ユネスコ本部の大ホールで行われた「国際音楽の日」記念音楽祭 に参加。ジョニー・グリフィンやジョン・ファディス、ビリー・コブハムな どと共演した。翌年は自分のツアーで行き、「JAZZY COLORS」と いうジャズフェスに参加。このオープニング・コンサートではダニエル・ ユメールと共演した。そんな思い出深いパリの街をイメージして作っ た作品を1曲目にしてみた。実際のパリというよりは、ぼくの中のパリの心象を音にしたもの。

2. Stella By Starlight:Ned Wasington
おなじみのスタンダード・ナンバー。元々は映画のエンディングテー マだったらしいが、数多くのジャズメンに愛され、もちろんぼくも大好 きな作品。自由に、何も考えず、ただ湧き出るままにプレイした。

3. Pensativa:Clare Fischer
2004年の「国際音楽の日」記念音楽祭に出演したとき、ジャズの巨 匠ビリー・テイラーがゲスト参加し、ソロピアノを1曲弾いた。彼はデュ ーク・エリントン、エラ・フィッツジェラルドと並んでアメリカで受勲した 3名のジャズアーティストの一人である。そしてなんと、あの時の1曲が彼の引退公演 となった。そのテイラー氏がリハーサルの時、「クレア・フィッシャーの とてもいい曲があるんだ」と言ってこの曲を弾いてくれた。それ以来耳 について、すっかりお気に入りの1曲になった。

4. Passage:クリヤ・マコト
その2004年、生まれて初めてパリの街を歩いた印象を曲にしたのがこれ。 どこを歩いても心地よい通りの雰囲気と、街中に充満する文化的な 空気、それに言いしれぬ自由な開放感に一発で魅了された。翌年パ リを再訪したときも、初めての時とまったく同じ印象を受けた。今年も ヨーロッパへ行くので、是非3年連続、3度目のパリを訪れたい。

5. 鐘がなります:山田耕筰
そんなパリでレジオン・ドヌール勲章を受章したこともある、山田耕筰の 名曲。ぼくは2004年、2005年と2年連続で彼の楽曲をフィーチャーしたコ ンサートをプロデュースしたが。その2回目にこの曲を取り上げ、Down To The Earthなアレンジを施した。その雰囲気が気に入って、このとても日本的な曲 をパリでレコーディングしてきた。

6. There Will Never Be Another You:Gordon & Warren
ボーカルナンバーとしてよく知られるジャズのスタンダード。今 回のレコーディング用に、かなりリハーモナイズした。テーマではコードを 細分化し、ソロピアノならではのメリハリを出してみた。逆にソロセクショ ンでは、ハーモニーを間引いて自由にストレッチしてみた。自分自身の中で、ジャズの嬉しみを満喫した曲。

7. Peaceful:クリヤ・マコト
昔作ったオリジナル曲の改作。最近ぼくが音楽で表現したいと思って いることは、ヨーロッパで感じた文化的、開放的な雰囲気と、もうひとつ 基本に返る「Down To The Earth」な世界。その原初的なイメージで書 いた祈りのような曲。ヨーロッパの各地でこの曲を演奏したが、どの街 でもとても暖かく受け入れてくれた。

8. Sight Of The Heart:クリヤ・マコト
今回のレコーディングは、「MEGA」というパリの素晴らしいスタジオで、 1日ですべて録りきった。日本から準備していった曲をすべて録り終え た後に、何も考えず真っ白な状態でプレイしたインプロヴィゼーションが この曲。リテイク無しのたった1テイク。初のヨーロッパツアーを終え、 初のソロピアノ・レコーディングを終えたばかりの、あの時のぼくの心象 が赤裸々に映し出されていると思う。

9. Autumn Leaves:Joseph Kosma
音楽的には、この曲がアルバム中で最もディープになったと思っている。 ご存知「枯葉」。欧州各国公演ですべてこの曲をプレイしたが、この極 めてアヴァンギャルドな枯葉にヨーロッパ聴衆の反応は熱狂的だった。 プレイした自分が、かえってびっくりしたくらい熱い反響だった。日本ではよく、 ジャズを始めた人たちがセッションするナンバーだが、モダンジャズの解釈 ではどこまでも果てしなくアウトしてしまえす、すごい曲だ。アメリカではあまり ポピュラーじゃない、っていう所も不思議な1曲。

10. ペチカ:クリヤ・マコト
山田耕筰の名曲をもう一つ。1886年に生まれた彼は、若き日にドイツへ 留学し、帰国後日本人で初めてのシンフォニーを作曲し、日本で初めて のオーケストラを作り、その後も世界的に活躍。フランスで受勲したほ かカーネギーホールで幾度も公演を成功させた、日本音楽界のまぎれ もないパイオニアだ。おまけになんと、ぼくの曾祖父の友人だった。 【 11. Close To You:Burt Bacharach 】  長年ソロピアノのレパートリーとしてプレイしてきた、バート・バカラックの 名曲。昔からインプロヴィゼーションで様々にリハモして弾いていたが、 今回も凝ったハーモニーにしてみた。幾通りもの解釈、幾通りもの アレンジを可能にする、そんな自由度を持った大好きな曲。

(クリヤ・マコト)

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